研究内容

研究紹介漫画

日刊工業新聞『キラリ研究開発』     

     著者:はやのん理系漫画制作室 http://www.hayanon.jp/

 2013年11月4日掲載(前編)   2013年11月18日掲載(後編) 

1.三回対称ペプチドコンジュゲートの合成と自己集合

球状ウイルスやクラスリンのような自然界のタンパク質ナノ集合体は、三回対称性の自己組織性ユニットが規則的に自己集合することにより、その骨格構造を形成しています。私達は、これらの自己集合戦略に学び、三回対称性のβ-シート形成ペプチドコンジュゲートTrigonal(FKFE)2を設計・合成し、それが水中で逆平行β-シートを形成しながら自己集合させることで、ウイルスサイズ(20 nm)の球状集合体を構築することに成功しました。また、短い天然トリペプチドであるグルタチオンも三回対称コンジュゲートとすることで、水中での自己集合性を獲得し、100-250 nm程度の球状集合体を形成することも見出しています。

発表論文

2.ウイルス由来β-Annulusペプチドの自己集合による合成ウイルス殻の構築

2010年に私達は、トマトブッシースタントウイルスの骨格構造の三回対称性β-Annulus構造を構造モチーフとした24残基人工ペプチド(INHVGGTGGAIMAPVAVTRQLVGS)を合成し、それらが水中で自己集合することにより、約30-50 nmのウイルス様のナノカプセルを形成することを世界で初めて見出しました。このペプチド集合体は、小角X線散乱により中空構造であることが、ζ-電位のpH依存性からペプチドのC末端が外側に配向した構造であることがわかっています。トマトブッシースタントウイルスを構成しているタンパク質(388残基)のわずか 24 残基のペプチドが、一分子折り畳み構造や繊維構造を形成せず、球状集合体のみを形成するという発見は大変興味深いと思われます。このペプチドのN末端(集合体内部に存在)やC末端(集合体表面に存在)などを様々な分子で修飾することにより、ペプチドナノ集合体の内部や表面を選択的に化学修飾することができ、合成ワクチンやドラッグキャリヤーなどの望みの機能性を内部・表面選択的に付与した機能性バイオナノマテリアルの創製が可能になるかもしれません。

この成果は、産経新聞西日本新聞日経産業新聞Nature JapanJobs「特集記事」 で紹介されました。

発表論文

3.DNAの自己集合によるナノ~マイクロ組織体の構築

DNAは、(数10nm程度の長さ領域においては)比較的剛直な構造を有し、塩基配列の設計によりその集合構造をある程度自在にプログラムできるため、ナノ構造体構築の材料として注目を集めています。私達は、細胞認識性の糖鎖を、DNAの二重鎖形成によって空間配置を制御して一次元配列するという画期的な方法論を見出しました。具体的には、β-ガラクトースを持つオリゴDNAを合成し、半分ずらした相補鎖とハイブリダイゼーションさせることにより、糖鎖を一定間隔で集積化させることに成功しまし。また、DNAを「分子定規」として糖鎖の空間配置を制御することで、糖鎖認識タンパク質(レクチン)による分子認識を制御することにも成功しました。

さらに、三つの自己相補性末端を有する三叉路状DNAを設計し、それらの水溶液中での自己集合により、ナノ~マイクロサイズの籠状DNA集合体を構築することにも成功しています。この籠状DNA集合体は、DNA濃度、自己相補性末端の数・種類、冷却速度、塩濃度などの条件を変化させることにより、その形態・大きさをnm~μmの範囲で調節可能であり、新しい機能性ソフトマテリアルとしての応用が期待できます。

発表論文

4.糖鎖-糖鎖間相互作用の解析

近年、糖鎖生物学の進歩により、生体膜表面の糖鎖はタンパク質ばかりでなく、糖鎖間での分子認識をしていることが明らかとなってきています。例えば、ガン細胞であるB16メラノーマ細胞のGM3糖鎖とリンパ球細胞のGg3糖鎖が糖鎖間相互作用することで、これらの細胞接着が起こることが知られています。しかしながら、単独の糖鎖同士の水中での相互作用は観測できないほど弱いために、これまで認識メカニズムなどの物理化学的な研究は殆ど行われていませんでした。そこで、私達は、「糖鎖クラスター効果」による分子認識能の増幅を糖鎖間相互作用の系に適用し、これまで化学的には殆ど解明されていなかったGg3とGM3の間の糖鎖間相互作用を、糖鎖高分子存在下での糖脂質水面単分子膜の表面圧-面積曲線により、高感度に検出することに成功しました。さらに、表面プラズモン共鳴SPRを用いた動力学解析により、世界で初めて糖鎖-糖鎖間相互作用の定量的解析に成功しました。

発表論文

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